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Vol.3 コンクリート構造物の解体方法について、コンクリートの専門家がやさしく解説します!

投稿:2023-08-24 更新:2024-05-08

今回はコンクリート構造物を壊して、黒姫グループが扱っている「コンクリートがら」にするための「コンクリート構造物の解体方法」の種類について解説します。

皆さんは「コンクリート構造物の解体」と聞くと、「重機を使って荒っぽく取り壊す」というイメージを思い浮かべるかと思いますが、近年の市街地におけるコンクリート構造物の解体現場では「低騒音」「低振動」「粉塵抑制」といった周辺地域への環境配慮が重視される時代になっています。

圧砕工法・ブレーカー工法

圧砕工法

写真1 ブレーカー工法1)

最も一般的な解体工法は、重機に取り付けたペンチ状の油圧アタッチメントでコンクリートを噛み砕く「圧砕工法」と鉄ノミ状の油圧アタッチメントによる打撃でコンクリートを破砕する「ブレーカー工法」です(写真1)。
ただし、これらの工法は市街地などでは重機やコンクリート破壊時の騒音や振動、解体物の粉塵などが問題となることがあります。

低騒音・低振動・粉塵抑制解体工法

近年、市街地における解体では、周辺への環境負荷が小さく、低騒音・低振動・粉塵抑制に配慮した解体工法が適用されることが多くなってきています。

  1. ウォールソー工法
    ダイヤモンドを埋め込んだ円盤状の刃を高速回転させて鉄筋コンクリートを切断します。
  2. ワイヤーソー工法
    リング状に巻き付けたワイヤーを高速回転させて鉄筋コンクリートを切断します。
  3. 内部膨張工法
    あらかじめ削孔した孔の中にセメント系の膨張材を充填し、膨張圧を利用してコンクリートなどを破砕します。
  4. 油圧割岩工法
    あらかじめ削孔した孔にテーパ状のくさび刃を挿入し、油圧ジャッキにより拡孔・割裂破壊します。
  5. 微少発破工法
    導爆線と呼ばれる線状の爆薬を部材の断面に分散装薬することでコンクリートを切断破壊します。

各工法のメリット・デメリット

解体工法 使い分け方 メリット デメリット
圧砕工法
圧砕工法
重機を用いる工法において主流。小規模ビルであればこの工法だけで解体できる。 重機工法の中では振動や騒音が少なく、解体の効率が良い。 発生する粉塵の量が多く、養生シートや散水などの工夫が必要。
ブレーカー工法
ブレーカー工法
基礎部材や造成杭などの大型鉄筋コンクリート部材を解体するときに多く用いられる。 圧砕工法では噛み砕けない大型部材の解体が可能。 騒音が大きく、粉塵も大量に発生する。
ウォールソー工法 2)
ウォールソー工法
騒音・振動を嫌う住宅地や市街地、病院などでの部分的な切断解体に多く用いられる。 振動や振動、粉塵が少なく、定位置を切断するため、解体部分以外に悪影響がない。 大型ダイヤモンドブレードは高価で、鉄を多く切断する場合にはコストが高い。
ワイヤーソー工法 2)
ワイヤーソー工法
水中や高所など現場条件を選ばず、解体できる。防波堤や砂防ダム、橋脚などの切断に多く用いられる。 縦横斜め自由自在に切断が可能で、騒音や振動、粉塵が少ない。 ワイヤーのコストが高い。切断時に水処理が必要。熟練技術が必要。
静的破砕剤工法 2)
静的破砕剤工法
無振動、無騒音で解体できるため、住宅地や市街地、病院などで騒音・振動が制限させるときに多く用いられる。 無振動、無騒音で解体できる。静的破砕剤の取扱いが簡単で、工事に資格も必要ない。 静的破砕剤の化学反応に時間がかかり、解体物に亀裂を生じるまで1日~2日程度を要する。
油圧割岩工法 2)
油圧割岩工法
無振動、無騒音で解体できる。静的破砕剤工法に比べて解体速度が速い。 鉄筋コンクリート部材の場合、十分な破砕効果が得られない場合がある。
微少発破工法 大型の鉄筋コンクリート部材を瞬時に破砕でき、騒音・振動が重機工法よりも短く抑えられるため、市街地でのビル解体などに用いられる。 瞬時に騒音と振動が発生するため、市街地では現場周辺への周知が必要な場合がある。 爆薬を使っての解体のため、高い技術レベルを要する。
参考文献

1) 東空販売株式会社 HP:https://www.coring-osaka.co.jp/business/wet_wallsaw.html
2) 柳田克巳:鉄筋コンクリート(RC)造建築物の解体工法,コンクリート工学,Vol. 54, No. 4, 2016. 4

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